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明石歩道橋事故 民事訴訟判決要旨
2005/06/28 第1 事案の概要 (略) 第2 当裁判所の判断 1 被告らの注意義務の発生根拠 (略) 2 被告らの注意義務相互の関係 (1)警察の雑踏警備は、主催者の自主警備を補完するものにすぎないとすべきではなく、警察の雑踏警備に関する責任が軽減・免除されることはない。 (2)明石市、警備会社も、自主警備を実施すべき責任が軽減・免除されることはない。 (3)主催者である明石市と警備会社との間にも、責任の軽重関係はない。 (4)以上、雑踏警備に関する責任は、いずれかの者が主位的ないしは副位的な責任を負う関係にあるのではなく、すべての者が第一次的かつ全面的にその責任を負い、被告らそれぞれの責任に軽重関係はない。 3 事故の予見可能性 被告らはいずれも、花火大会で歩道橋付近が混雑し、混雑が前年のカウントダウンをはるかに上回るものであると認識可能だった。適切な規制措置を実施することなく放置すれば、雑踏事故が発生すると認識可能であったといえ、事故の予見可能性があった。 4 被告らの事前準備段階の過失 (1)事前準備の重要性 雑踏事故を防止するため、事前準備段階における適正な雑踏警備計画の策定が最も重要である。したがって本件は、被告らの事前準備段階における雑踏警備計画の策定等の不備が、事故発生の最も大きな原因であるととらえるべきである。 (2)警備会社の過失 ア 警備会社には、参集者の安全に十分に配慮した適正な雑踏警備計画を策定し、これを各警備員に周知徹底すべき注意義務があった。 イ ところが、元警備会社支社長は、カウントダウンの際には雑踏事故が発生しなかったことから、花火大会でも雑踏事故など発生するはずがないとし、検討も行わないまま、極めて安易に1、2次導線を設定し、これといった対策を警備計画に盛り込まなかった。 また元支社長は、カウントダウンの際の警備計画上の工夫を検討することはおろか、カウントダウンの際の混雑状況や規制の実施状況に関する情報収集さえ満足に行わないまま、極めてずさんな警備計画を策定した。しかも、警備計画の周知徹底を下請けの警備会社任せにし、各警備員に周知徹底されることはなかった。 ウ したがって、元支社長に注意義務に違反した過失があることは明らかで、警備会社は、損害賠償責任を免れない。 (3)明石市の過失 明石市には、イベントの開催場所や内容の決定など安全に配慮しつつ決定すべき注意義務があり、警備会社の選定でも人的、物的能力を備えた警備会社を選定すべき注意義務があった。さらに警備計画を策定する際も、警備会社と十分な協議を行い、警備計画策定後は、適切かを検討し、不備があれば改善させるべき注意義務があった。 ところが、元市民経済部長らは、参集者の安全を確保することの困難な大蔵海岸を花火大会会場に選定し、参集者の滞留し易い場所に夜店の出店場所を決定するなどして、安全を確保することが困難な状況を自ら進んで作出した。そして元市民経済部長らは、準備作業の大半を1人の元商工観光課員に負担させ、警備会社の選定の実質的な検討を行わないまま、安易に選定し、下請警備会社の選定については市会議員の意向を重視し、安易に明石市内の警備会社を選定した。 元市民経済部長らは、警備計画の策定、とりわけ参集者の安全の確保についてはすべてを警備会社に丸投げし、雑踏警備計画の適否については、一切検討していないばかりか、関心さえ抱かなかった。元市民経済部長らの対応は、主催者としてあるまじき行為であり、責任意識は全く欠落しているといわざるを得ず、極めて無責任というほかない。元市民経済部長らには、注意義務に違反した過失があることは明らかであり、明石市は、原告らに対する損害賠償責任を免れない。 (4)警察の過夫 警察には、主催者側の自主警備について積極的かつ具体的に指導・助言を行うとともに、自主警備のみに委ねることなく、自らも適正な雑踏警備計画を策定すべき注意義務があった。 ところが、明石署員の大半が、カウントダウンの際には雑踏事故が発生しなかったことから、花火大会においても雑踏事故など発生するはずがないと軽信し、真摯に受け止めなかった。また、明石署員は、暴走族対策ばかりに目を奪われ、雑踏警備については主催者側が自主警備により実施するものであり、自らが実施する責任はないとして、安全を確保すべき警察の責務を放棄するという態度に終始した。 その結果、明石署の元地域官は、歩道橋直下付近に夜店を出店させると、歩道橋南端部付近において雑踏事故が発生する危険性が高まるという点を全く軽視し、夜店の出店場所を変更したいとの明石市の申し入れに強く反対した。また、自主警備について、非常に抽象的な指導・助言しかおこなわなかった。さらに、明石署は、自らの策定する警備計画について、暴走族対策には万全の対策を講じながらも、雑踏警備に関しては、極めてお粗末な対策しか講じなかった。 明石署員の対応が、暴走族対策に著しく傾斜し、雑踏警備を軽視することとなった原因は、元署長の責めによるところが大きい。警備方針について、当初から暴走族対策を強く打ち出し、雑踏警備は自主警備により実施させればよいので、軽視しても構わないとの考えを有していたものであり、上命下服が尊ばれる警察社会において、元署長の意向が強く反映された結果、明石署の警備計画は、雑踏警備については極めてお粗末な対策しか講じられなかったものである。そして、こうした姿勢は、主催者側の自主警備に対する指導・助言の場面においても、色濃く表れたものと認められる。従って、元署長を始めとする明石署の警察官には、注意義務に違反した過失があることは明らかであり、兵庫県は、原告らに対する損害賠償責任を免れない。 5 被告らの花火大会当日における過失 (1)警備会社の過失 元警備会社支社長は、明石市職員や各警備員から、歩道橋付近の混雑状況に関する報告を受けるなどしていながら、警備員に対し、具体的な措置を指示することはなく、事故が発生するまで、歩道橋上の異常な混雑状態を放置した。従って、元警備会社支社長には、注意義務に違反した過失があることは明らかであり、警備会社は、原告らに対する損害賠償責任を免れない。 (2)明石市の過失 歩道橋付近の混雑状況を目撃しながら、危機感を持ったのは元副主幹ら2人で、元部長ら4人は何ら危機感を持たず、警備員に任せればよいと安易に考え、放置した。元部長ら4人には注意義務違反の過失があることは明らかで、明石市は損害賠償責任を免れない。 (3)警察の過失 元地域三課長は、歩道橋を通行し、混雑を直接見ていながら、混雑解消を措置することも、上司に進言することもしなかった。また、元地域官は混雑を目撃したり、無線連絡等を受けながら、混雑解消を指示せず、警備会社から分断規制の依頼をほのめかす発言をされ、部下から管区機動隊の投入の必要性などを訴える報告を受けながら、放置した。署警備本部の元署長及び元副署長は、各警察官からの無線連絡や、歩道橋南端部付近の混雑状況を映し出すテレビモニターの映像等により、危険な混雑状況を認識し、または容易に認識し得たにもかかわらず、元地域官らに対し、分断規制等の混雑解消措置を何ら指示しなかった。したがって、元署長ら明石署の警察官に注意義務に違反した過失があることは明らかで、兵庫県は損害賠償責任を免れない。 6 原告らの損害額 (1)犠牲者の損害について (略) (2)原告ら固有の損害(固有の慰謝料)について 基本となる慰謝料は、犠牲者と親子関係にある原告らの遺族固有の慰謝料額は、各150万円(ただし2人については各300万円)が相当と認める。(1)歩道橋内で犠牲者とともに、ないしは犠牲者の近くで事故に巻き込まれ、かつ、(2)事故後、兵庫教育大、兵庫県心のケアセンターのいずれかでPTSDの診断を受けている者(8名)は、各100万円(ただし2人については各150万円)の増額を認める。上記基準に該当しない者のうち、4人については各50万円の増額を認める。それ以外の者は、増額は認められない。 その他の原告の1人については、実質的に犠牲者の母親代わりを務めていたと評価できるため、100万円の限度で遺族固有の慰謝料請求権を認める。ほか2人は、証拠上、実質的に犠牲者と親子関係があると同視できず、遺族固有の慰謝料請求権は認められない。 第3 結論 花火大会で、被告らのうちのいずれか一者でも、自己の責務を果たすべく、万全の準備を行っていれば、事故の発生は防げた可能性があり、そのことを考えると、被告らのいずれもが不適切な対応に終始したことはまことに残念で、被告らの責任、とりわけ事前準備段階における責任は、極めて重いものといわざるを得ない。 原告らの本訴請求は、被告らが、2人を除く原告らに対し、民法ないしは国家賠償法に基づく各損害賠償金及び年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その他の請求はいずれも棄却する。 ・特集「明石・歩道橋事故」 [ 閉じる ]
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